Special Interview

<前編>

soraya 壷阪健登/石川紅奈

トリプルファイヤー 吉田靖直/鳥居真道

2025年4月16日、soraya が約1年ぶりとなる自主企画をVeats Shibuyaにて開催する。そこでsorayaが今回対バン相手としてオファーをしたのが、7年ぶりにAlbum「EXTRA」をリリース、Fuji rock Festival 2025への出演も決定している トリプルファイヤーだ。注目のライブを目前に控えた2組の対談インタビューを 前編と後編に渡って公開する。 

  interview&Photo /臼杵成晃 


──sorayaがトリプルファイヤーを対バン相手に選んだのは予想外で、すごく驚きました。

壷阪健登 僕らとしてもまさか引き受けてくださるとは思わなかったです(笑)。僕ら2人は普段ジャズ界隈で活動しているんですけど、スタンディングのライブをしたことがなくて。今回Veats Shibuyaさんとの機会をいただいた中で、もしご一緒できたら……と本当に思いつきというか、勢いでエイッと。僕は2年くらい前にトリプルファイヤーさんのことを知って以来、純粋にファンとして聴いていたんです。

──sorayaはあくまでジャズシーンの人たちという印象なので、ジャズ畑の2人がポップスをやる上で異文化交流的なものを求めたのだろうと思いましたが、インディーロックシーンの中でも異端のトリプルファイヤーを自主企画の相手に選んだというのがすごく意外で。そもそもトリプルファイヤーのどんなところに惹かれたんですか?

壷阪 僕はバンドの音楽、ロックというものをあまり知らないんですけど、トリプルファイヤーさんはサウンドにすごく惹かれたんです。歌詞とかメッセージ性に行き着く前に、純粋に音楽として楽しくて。

石川紅奈 私はこの対バン企画が立ち上がったときに壷阪くんに教えてもらって初めてトリプルファイヤーさんのことを知ったんですけど、そこから音楽の気持ちよさにハマって……吉田さんのYouTubeチャンネルとかを観ているうちにシンプルにファンになっていて(笑)。自分たちのイベントをやるとしたら、やっぱり自分がファンになれる人をお呼びしたかったので、とてもうれしいです。

壷阪 (持参した最新アルバム「EXTRA」を手に取って)CDにはインスト盤も付いてるじゃないですか。吉田さんのボーカルなしで聴くと、自分が普段聴いている音楽と共通する要素がたくさんあって。でも、インストを聴いたあと、また吉田さんの言葉が乗った音に戻ったときに、自分がオファーしたことに納得する部分があったというか。オファーをしたときは自分でも謎のまま、その界隈の音楽のことも知らずにエイッとお願いしたんですけど、改めて「EXTRA」を聴いて「ああ、だから楽しくなると思ったんだな」と思った次第です。

鳥居真道 オファーがあったときは、なんで私たちなんだろうと思いましたけど(笑)、よっぽどの事情というかモチベーションがないと声はかけないと思うので、光栄だなという気持ちです。

──トリプルファイヤーのお二人は、sorayaの音楽にどんな印象をお持ちですか?

吉田靖直 いやあ……ちゃんと音楽を修めた人の音楽だなあっていう。ちゃんとアカデミックな素養がある感じが伝わってきて、萎縮しますね。

石川 いやいや(笑)。

壷阪 オファーも一蹴されるかと思ってたんですけどね。「このスノッブどもが!」みたいな(笑)。

吉田 断っていたとしても一蹴はしないです(笑)。

壷阪 こちらとしては異文化交流とか変わり種みたいな気持ちじゃなく、直球でお呼びしたつもりなんです。

鳥居 僕はジャズなどの素養がなくやってきたので、畏怖の念を抱くというか、ジャズと聞くとちょっと畏れ多いなと思うんですけど、sorayaの音楽を聴いてみたら、普段自分が聴いている音楽とクロスする部分もあって。パッと見の組み合わせのインパクトはあると思いますけど、ライブをやってみたらきっと通ずるところがあるんだろうなと。

──2組のバックボーンは違えど共通する部分として、エキゾ的な要素、細野晴臣チルドレン的なものを感じるのですが。

壷阪 そこは前作の「FIRE」(2017年発売)以降から、バンド編成も含めて今回の「EXTRA」でバーンと出ている要素かなと思うんですけど、すごく存在感のあるパーカッションやキーボードはデモの段階からそれありきで作っていたんですか?

鳥居 そうですね。「FIRE」でそれが規定路線になって、「EXTRA」は曲作りの段階からキーボードや鍵盤ありきで作ってました。

壷阪 エキゾチックなもの、ラテンサウンドをやろうとすると「このパターン」みたいなことになりがちなんですよ。でもそれだと面白くないし、ただのパクリになっちゃう。何と一言では言わせないものにしたい、というのはsoraya的にはあって。サンバにしない、し切らないとか。そこにオリジナリティという着地点を見つけるみたいなところが僕らにはあって、トリプルファイヤーさんにも同じようなものを勝手に感じていたんですけど、そこらへんはどうなんですか? アフロビートとかブラジリアンとか、ファンクのラインをどう取り入れているのかに興味があって。

鳥居 僕らは演奏力がないから結局パロディにしかならないんですよ。本気でアフロビートをやろうとしてもできないので、偽物を作るというか……海外の料理を作るときに日本っぽい味付けをするみたいな感じで、オリジナルに寄せないで「なんちゃって」を広げていくみたいな。「なんちゃって」をオリジナルに変えていくイメージですね。

壷阪 それはスカシというわけでもないですよね。

鳥居 ええ。やってみましたよーみたいなノリじゃなくて、ということですよね。

壷阪 現にこうして聴いたこともないトラックが生まれてるわけじゃないですか。きっと細野さんにしてもそういう、ある種自虐的な視点をパロディ的に持っていながら、そこが個性になっていて。それはトリプルファイヤーさんにも感じていて、すごくカッコいいなと思うんです。

鳥居 やろうとしてもできないから、対象に近付けないというのは大きくて。ゴリゴリに楽器が弾ける人がメンバーにいたら、ガチでアフロビートをやりたいと思っていたかもしれない。まあ、やっても楽しくないと思うんですけどね。それは趣味でいいし、フェラ・クティを聴けばいいから。商品にする場合は工夫が要るよなっていう。

──お互い、気になった曲や好きな曲を具体的に挙げるとしたら?

壷阪 最初に興味を持つきっかけになった曲は「スキルアップ」(2014年発売の2ndアルバム表題曲)なんですけど、もしもsorayaと交差させていただくなら、と考えたら「EXTRA」の楽曲が特に好きで。華やかで、ハーモニーがあって……僕はやっぱりハーモニーフェチなので(笑)。中でも「スピリチュアルボーイ」や「相席屋に行きたい」が好きですね。

石川 私も「相席屋に行きたい」がすごく好きです。イントロがめちゃくちゃカッコいい。「EXTRA」は総じて好きなんですけど、「FIRE」の1曲目の「中一からやり直したい」とか、トリプルファイヤーさんはイントロでグッとくる曲が多くて。なんとも言えない、いろんなものが混ざってる感じ……私はジャズ屋がやるラテンとかが大好きなので、それを聴いている気持ちよさと同じものを感じて好きですね。

鳥居 さっき細野さんの話が出ましたけど、「ゆうとぴあ」(2023年11月配信リリースの4thシングル)は細野感があるなと思いました。……そんなことないですか?

壷阪 あれは完全に、ラブレターです(笑)。

鳥居 おっちゃんのリズム的な。

壷阪 2020年にコロナ禍で生演奏ができなくなってしまった中で、僕はボストンにいたんですけど、これからがんばっていくぞというときに家から完全に出られなくなって。その頃、歌のある音楽にすごく癒されたんです。ジャズのような細かい音楽が聴けなくなっちゃって。そんなとき、目の前をハリー細野が横切っていった、みたいな。sorayaが生まれたきっかけもそこからで。紅奈が歌い始めたのもその頃。

石川 はい。それまではベース一本だったんですけど、コロナ禍で動画を上げ始めて、1人でできることを探っているうちに歌を歌うようになって。そこで2人で一緒にやり始めたのがsorayaの始まりです。

吉田 歌は最初から上手だったんですか?

石川 全然上手じゃなかったんですけど(笑)、なんとか1人で完成させたくて。人と会えないから、1人で曲を完成させるとしたら、ベースと歌だったらできるかなって。

──そこから4年足らずでジャズボーカリストとしてデビューすることになるんだから、すごいですよね。

石川 それはもう、教えてもらって(笑)。最初からめっちゃ歌えるからとかでは全然なくて、ただ好きだったって感じですね。

吉田 ボーカルって訓練することで変わっていくものですか? 楽器がうまくなるみたいに。

石川 ジャズは(ピッチや譜割りを)正確に当てないと成立しない部分があったりして、sorayaの楽曲もわりとそうだから難しいんですけど、それはけっこう楽器的な要素が必要なんです。だからボイトレも声帯の作りから教えてくれるようなところで教えてもらいました。

吉田 ああ……すごいですね。なんか。

──吉田さんが気になったsorayaの楽曲は?

吉田 「BAKU」(2022年10月リリースの2ndシングル)は軽やかというか、人懐っこさがあっていいですね。なんというか……怖い人たちじゃないかもしれないって。

壷阪・石川 あはははは(笑)。

吉田 今は怖くないですけど、もし先生とかになったらクールに表情を変えずに叩いてきそう。いや、わかんないですけど(笑)。ジャズの厳しい世界ってそういうもんなんだろうなって。

石川 「セッション」(2014年公開の映画)の印象かな(笑)。

吉田 「セッション」は嘘だという話は聞いてますけど。

壷阪 僕らも同じくらいバンドの世界は未知だから、今日は2人でめっちゃ緊張してました(笑)。


LIVE INFO

❒ soraya meets トリプルファイヤー
2025.4.16(水)Veats Shibuya
(東京都渋谷区宇田川町33−1 グランド東京渋谷ビル)
open 18:00 / start 19:00
出演:soraya /トリプルファイヤー

【チケット】
一般¥5,000/学生¥3,300 /2F 指定¥7,000/親子ペア指定¥5,000
(税込・ドリンク代別途)
※購⼊枚数制限︓4枚(親⼦ペア席はお⼀⼈様1枚まで)

🔽チケット申込
https://eplus.jp/soraya_triplefire/


GOODS

COMING SOON….